を分け、岬《みさき》の突端に往った。岩間には其処《そこ》此処《ここ》水溜《みずたまり》があり、紅葉した蔓草《つるくさ》が岩に搦《から》んで居る。出鼻に立って眺める。川向う一帯、直立三四百尺もあろうかと思わるゝ雑木山《ぞうきやま》が、水際から屏風《びょうぶ》を立てた様に聳《そび》えて居る。其中腹を少しばかり切り拓《ひら》いて、こゝに停車場が取りついて居る。檣《ほばしら》の様な支柱を水際の崖《がけ》から隙間《すきま》もなく並べ立てゝ、其上に停車場は片側《かたかわ》乗って居るのである。停車場の右も左も隧道《とんねる》になって居る。汽車が百足《むかで》の様に隧道を這《は》い出して来て、此停車場に一息《ひといき》つくかと思うと、またぞろぞろ這い出して、今度は反対の方に黒く見えて居る隧道の孔《あな》に吸《す》わるゝ様に入って行く。向う一帯の雑木山は、秋まだ浅くして、見る可き色もない。眼は終に川に落ちる。丁余《ちょうよ》の上流では白波《しらなみ》の瀬をなして騒いだ石狩川も、こゝでは深い青黝《あおぐろ》い色をなして、其処《そこ》此処に小さな渦《うず》を巻き/\彼吊橋の下を音もなく流れて来て、一部は橋の
前へ
次へ
全684ページ中646ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング