一日と徐に私共の仕事をすすめて居ます。
 書きたい事に切りがありませんが、其は他日の機会に譲って、読者諸君の健康を祝しつつここに一先《ひとま》ず此手紙の筆を擱《さしお》きます。
[#ここから2字下げ]
大正十二年十二月三十日
[#ここで字下げ終わり]
[#地から11字上げ]東京府 北多摩郡
[#地から12字上げ]千歳村 粕谷
[#地から8字上げ]恒春園に於て
[#地から3字上げ]徳冨健次郎
[#改丁、左右中央に]

    附録

[#改丁]

    ひとりごと

      蝶の語れる

 吾《われ》、毛虫《けむし》たりし時、醜《みにく》かりき。吾、蝶《てふ》となりて舞《ま》へば人《ひと》美《うつく》しと讃《ほ》む。人の美しと云ふ吾は、曩《その》昔《かみ》の醜かりし毛虫ぞや。
 吾、醜かりし時、人《ひと》吾《われ》を疎《うと》み、忌《い》み、嫌ひて避け、見る毎《ごと》に吾を殺さんとしぬ。吾、美しと云はるゝに到れば、人《ひと》争《あらそ》うて吾を招く。吾れの変れる乎《か》。人の眼《まなこ》なき乎。
 吾、醜しと見られし時、吾《わが》胸《むね》のいたみて、さびしく泣きたることいかばかり
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