伝《てつだい》に行かねばならなかったのであった。
 爺さんは泣声《なきごえ》して、
「岩もね、二週間すると来ますだよ」と云う。「兵隊に出すのが嫌だなンか云うことァ出来ねえだ。何でも大きくなる時節で、天子様《てんしさま》も国《くに》を広くなさるだから」と云う。
 誰が教えたのかしら。
[#地から3字上げ](同 十二月一日)
[#改ページ]

     生死

 霜無く、風無く、雲無く、静かな寂《しず》かな小春の日。
 昨夜、台所の竈台《へっついだい》の下の空籠《からかご》の中で、犬のピンがうめいたり叫《さけ》んだりして居たが、到頭四疋子を生んだ。茶色《ちゃいろ》が二疋、黒《くろ》が二疋、あの小さな母胎《ぼたい》からよく四疋も生れたものだ。つい今しがた母胎を出たばかりなのに、小猫《こねこ》の様な啼声《なきごえ》を出して、勢《いきおい》猛《もう》に母の乳にむしゃぶりつく。
 子犬の生れた騒ぎに、猫のミイやが居ないことを午過《ひるす》ぎまで気付《きづ》かなかった。「おや、ミイは?」と細君《さいくん》が不安な顔をして見廻《みま》わした時は、午後の一時近かった。総《そう》がかりで家中探がす。居ない
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