ん》の月|冴《さ》ゆとても、鞍馬の山に雪降るも、御所の猿辻《さるつじ》猿の頬《ほ》に朝日は照れど、烏《からす》啼《な》く椋《むく》の梢《こずゑ》に日は入れど、君は来まさず。君が御名《みな》得《え》し祐《さち》の井の、井《ゐど》のほとりの常磐木《ときはぎ》や、落葉木《らくえふぼく》の若葉《わかば》して、青葉《あをば》となりて、落葉《おちば》して、年《とし》また年と空宮《くうきう》に年は遷《うつ》りぬ四十五《しじふいつ》。
 四十五年の御代《みよ》長く、事|稠《しげ》き代の御安息《みやす》無く、六十路《むそぢ》あまり一年《ひととせ》の御顔《みかお》に寄する年の波、御魂《みたま》は慕《した》ふ西の京、吾事終へつと嘘《うそむ》きて、君|逝《ゆ》きましぬ東京に。
 東下り、京上り、往来《ゆきき》に果つるおん旅や、御跡《おんあと》印《しる》す駅路《うまやぢ》の繰りひろげたる絵巻物《ゑまきもの》、今巻きかへす時は来ぬ。時こそ来つれ、生涯の御戦闘《みいくさ》終《を》へて凱旋《がいせん》の。時こそ来つれ、生涯の御勤労《みつとめ》果てゝ御安息《おんやす》の。
 曩昔《そのかみ》の東下りの御板輿《おんいたご
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