う》の信者である。遠い神仏《しんぶつ》を信心するでもなければ、近所隣の思惑《おもわく》や評判を気にするでもなく、流行《はやり》とか外聞《がいぶん》とかつき合《あい》とか云うことは、一切禁物で、恃《たの》む所は自家の頭と腕、目ざすものは金である。与右衛門さんには道楽《どうらく》と云うものが無いが、金と酒は生命《いのち》にかけて好きである。家《うち》で晩酌《ばんしゃく》に飲み、村の集会で飲み、有権者だけに衆議院議員の選挙《せんきょ》振舞《ぶるまい》で飲み、どうやらすると昼日中《ひるひなか》おかず媼《ばあ》さんの小店《こみせ》で一人で飲んで真赤《まっか》な上機嫌《じょうきげん》になって、笑って無暗《むやみ》にお辞義をしたり、管《くだ》を巻いたり、気焔《きえん》を吐《は》いたりして居ることがある。皆が店を覗《のぞ》いて、与右衛門さんのお株《かぶ》梅ヶ谷の独相撲《ひとりずもう》がはじまりだ、と笑う。与右衛門さんは何処までも自己中心である。人が与右衛門さんの地所を世話すれば、世話人は差措《さしお》いて必|直談《じきだん》に来る。自身の世話しかけた地所を人が直談にすれば、一盃機嫌で怒鳴《どな》り込ん
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