り、展望して方向をきめるのです、と。突然|銃声《じゅうせい》が響いた。唯一発――あとはまた森《しん》となる。日光恋しくなったので、ここから引返えし、林の出口でサビタの杖など伐《き》ってもらって、天幕に帰る。
 勝手元《かってもと》は御馳走《ごちそう》の仕度《したく》だ。人夫が採《と》って来た茶盆大《ちゃぼんだい》の舞茸《まいたけ》は、小山の如く莚《むしろ》に積《つ》まれて居る。やがて銃を負《お》うてアイヌが帰って来た。腰には山鳥《やまどり》を五羽ぶら下げて居る。また一人|川下《かわしも》の方から釣棹《つりざお》肩に帰って来た。※[#「魚+完」、第4水準2−93−48]《やまべ》釣りに往ったのだ。やがてまた一人銃を負うて帰った。人夫が立迎えて、「何だ、唯《たった》一羽か」と云う。此も山鳥。先刻《さっき》聞いた銃声《じゅうせい》の果《はて》なのであろう。火を焚《た》く、味噌《みそ》を摺《す》る、魚鳥《ぎょちょう》を料理する、男世帯《おとこじょたい》の目つらを抓《つか》む勝手元の忙しさを傍目《よそめ》に、関翁はじめ余等一同、かわる/″\川畔《かわばた》に往って風呂の馳走《ちそう》になる。荒削《あらけず》りの板を切り組んだ風呂で、今日は特に女客《おんなきゃく》の為め、天幕《てんまく》のきれを屏風《びょうぶ》がわりに垂《た》れてある。好い気もちになって上ると、秋の日は暮れた。天幕にはつりランプがつく。外は樺《かば》の篝火《かがり》が真昼《まひる》の様に明るい。余等の天幕の前では、地上にかん/\炭火《すみび》を熾《おこ》して、ブツ/\切りにした山鳥や、尾頭《おかしら》つきの※[#「魚+完」、第4水準2−93−48]《やまべ》を醤油《したじ》に浸《ひた》しジュウ/\炙《あぶ》っては持て来《き》、炙っては持て来る。煮たのも来る。舞茸《まいたけ》の味噌汁《みそしる》が来る。焚き立ての熱飯《あつめし》に、此山水の珍味《ちんみ》を添《そ》えて、関翁以下当年五歳の鶴子まで、健啖《けんたん》思わず数碗《すうわん》を重《かさ》ねる。
 日はもうとっぷり暮れて、斗満《とまむ》の川音が高くなった。幕外《そと》は耳もきれそうな霜夜《しもよ》だが、帳内《ちょうない》は火があるので汗ばむ程の温気《おんき》。天幕の諸君は尚《なお》も馳走に薩摩《さつま》琵琶《びわ》を持出した。十勝の山奥に来て薩摩琵琶とは、
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