シルローヅ」に傍線]をして勝手に其帝国を経営せしめよ。幾多のロスチャイルド[#「ロスチャイルド」に傍線]、モルガン[#「モルガン」に傍線]をして勝手に其|弗《ドル》法《フラン》を掻き集めしめよ。幾多のツェッペリン[#「ツェッペリン」に傍線]、ホルランド[#「ホルランド」に傍線]をして勝手に鳥の真似魚の真似をせしめよ、幾多のベルグソン[#「ベルグソン」に傍線]、メチニコフ[#「メチニコフ」に傍線]、ヘッケル[#「ヘッケル」に傍線]をして盛んに論議せしめ、幾多のショウ[#「ショウ」に傍線]、ハウプトマン[#「ハウプトマン」に傍線]をして随意に笑ったり泣いたりせしめ、幾多のガウガン[#「ガウガン」に傍線]、ロダン[#「ロダン」に傍線]をして盛に塗《ぬ》り且|刻《きざ》ましめよ。大多数の農は依然として、日出而作《ひいでてさくし》、日入而息《ひいってやすみ》、掘井而飲《いどをほってのみ》、耕田而食《たをたがやしてくら》うであろう。倫敦、巴里、伯林、紐育、東京は狐兎の窟《くつ》となり、世は終に近づく時も、サハラ[#「サハラ」に二重傍線]の沃野《よくや》にふり上ぐる農の鍬は、夕日に晃《きら》めくであろう。
四
大なる哉土の徳や。如何なる不浄《ふじょう》も容《い》れざるなく、如何なる罪人も養わざるは無い。如何なる低能の人間も、爾の懐に生活を見出すことが出来る。如何なる数奇《さくき》の将軍も、爾の懐に不平を葬ることが出来る。如何なる不遇の詩人も、爾の懐に憂を遣《や》ることが出来る。あらゆる放浪《ほうろう》を為尽《しつく》して行き処なき蕩児も、爾の懐に帰って安息を見出すことが出来る。
あわれなる工場の人よ。可哀想なる地底《ちてい》の坑夫よ。気の毒なる店頭の人、デスクの人よ。笑止なる台閣《だいかく》の人よ。羨む可き爾農夫よ。爾の家は仮令豕小屋に似たり共、爾の働く舞台は青天の下、大地の上である。爾の手足は松の膚《はだ》の如く荒るゝ共、爾の筋骨は鋼鉄を欺く。烈日《れつじつ》の下《もと》に滝なす汗を流す共、野の風はヨリ涼しく爾を吹く。爾は麦飯《むぎめし》を食うも、夜毎に快眠を与えられる。急がず休まず一鍬一鍬土を耕し、遽《あわ》てず恚《いか》らず一日一日其苗の長ずるを待つ。仮令思いがけない風、旱《ひでり》、水、雹《ひょう》、霜の天災を時に受くることがあっても、「エホバ与え、
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