伊賀、伊勢路
近松秋江
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)伊賀《いが》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)名匠|狩野元信《かのうもとのぶ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]り
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)漸う/\
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私には、また旅を空想し、室内旅行をする季節となつた。東京の秋景色は荒寥としてゐて眼に纏りがない。さればとて帝劇、歌舞伎さては文展などにさまで心を惹かるゝにもあらず、旅なるかな、旅なるかな。芭蕉も
[#天から2字下げ]憂きわれを淋しがらせよ閑古鳥
といひ、また
[#天から2字下げ]旅人と我名呼ばれん初しぐれ
ともいつたが、旅にさすらうて、折にふれつゝ人の世の寂しさ、哀れさ、またはゆくりなく湧き來る感興を味はふほど私にとつての慰藉はない。東京は、私には、あまりに刺戟が強く、あまりに賑かすぎて、心はいつも皮相ばかりを撫でてゐるやうである。東京にゐると、
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