無意識に汗の滲み出た額のあたりを指でこすりながら、心配さうに大小の焚火を見やつた。彼の声はしはがれてゐた。
「ですが、何とも手のつけやうがない」
房一の顔は重々しい沈思の表情と太い興奮の色とで紅黒く、やはり膏汗が漲つてゐた。
「さうですが、それはさうにちがひないが――」
と、加藤巡査はくり返した。
「このまゝでは責任者を出さなくてはならなくなる。手落ちは向ふにあるとしてもですよ」
「ふむ」
「それに――」
と、加藤巡査は声を落した。彼は、さきほど事が容易でないと思つたから、とり敢《あ》へず本署に電話をかけた、署長はじめ自動車で来ると云つてゐたから、まごまごしてゐるうちには着くだらう、さうなるとこのまゝでは納《をさま》りがつかなくなる、怪我人を出さぬうちに事が静まるのは自分の望むところであるし、皆さんの方もいゝではないか――。
「よし!」
と、房一はぐいと身体を起した。それがあまり突然だつたので、傍にゐた徳次は慌てて立ち上つた。
それまで房一は、加藤巡査を通じて出張所と話をつけ、何らかの形で収拾させたいと考へてゐたのである。が、彼の素速い判断力は今はその余裕もないことを見抜いた
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