けでね」
 と、小谷が云つた。
「あゝ、よからう。大賛成ですよ」
 のむことなら! といふ風に、練吉は切れ目をぱちぱちさせた。

     四

 御大典とそれにつゞく奉祝日は瞬《またゝ》くまに過ぎ去つた。
 河原町では、山車《だし》や仮装行列のほかに、夜に入つては提灯行列が出たし、町の上手にある神社の境内では奉祝の花競馬も行はれ、射撃大会まであつた。競馬の行はれた境内は不断殆ど人気のない所で、そこには永い間風雨にさらされて木口《こぐち》がすつかり灰白色になつた大きい拝殿がゆるんだ屋根の端を高いところで傾けてゐた。そこには紅白の幕が張られた。走路は拝殿のわきのかなりな池の周囲に造られたが、所々に笹を立て、それを荒縄でつないだだけで、方々から集つた馬は大抵胴がいやに太くて足の短い、腹や胸のあたりにぼさぼさした毛の生えた代物だつたが、わきに外《そ》れやうとする馬は周囲を黒山のやうに囲んだ見物人達の喚声と棒切れとで又内側へと追ひこまれ、池の中にはまりこみ、泥まみれになつて走つたりした。拝殿の観覧席には相沢知吉の顔が見えた。彼の持馬も出場したのである。相沢は例のカーキ色のズボンをはいて来たが、
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