のそれぞれな持前が、尖つた顎だの鹿爪らしい顔つきだのいふものが今や歴然と姿を現した。まだ解散にならぬ前から気早やに冠をかなぐり取つた者もゐたし、衣裳をぬぎにかゝつた者さへあつた。
「ねえ、御苦労なこつた」
 疲労したあまり不機嫌になつた大石練吉は、手荒く疳性《かんしやう》に衣裳をくるくると巻きながらいつもよりも激しくその切れ目をぱちぱちさせて云つた。
「先生、どうしなさる? 着て行きますかい」
 と、きよろりとした目つきに返つた徳次は、立ちはだかつたやうな恰好になりながら、房一の傍に停つて訊いた。
「いや、もう御免蒙つて脱いで行かう」
 彼が冠をとると、円味のある顎肉には紐の痕が紅く残つてゐた。
「どうしたい、君はその恰好をまだ見せたい気かい」
 と、練吉は、彼等のわきにさつきから立つてゐた今泉に向つて、揶揄《やゆ》するやうに訊いた。どういふものか、今泉の紙衣裳はちつとも痛んでゐなかつた。これといふ皺もついてゐなかつたし、木沓さへ完全であつた。冠をつけ、まだ笏を心持構へた恰好で、こんなに皆が疲れ切つた様子をしてゐるにかゝはらず、今泉だけはその稍冷い感じのする四角な顎を生き生きとさせ、あ
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