が突然、練吉の中に溢れ、それは永い間に積つた憤りのごとく、彼の運命の唯一の手違ひだつたごとく、彼の不身持の云ひわけにもなり、又正文への訴へといふ一種矛盾した形となつて現れるのだつた。
一方、正文はこの大人と子供と混《ま》ざり合つたやうな、身体だけは大振りな、女にかけては強《したゝ》かな息子を前にして途方に暮れた。彼はあれほど自分の思ひ通りに仕立てようとしたにかゝはらず、思ひもよらぬ息子として現れた練吉に対し、今|遅蒔《おそまき》ながらその心底に立つて理解してやらうと試みてゐた。だが、何といふ支離支滅な、性懲《しようこ》りもないふしだらだつたらう、どういふ風に彼の云ひ分に耳を傾け、どんな風に彼を認めてやればいゝのだらう――そこには何一つ彼の型にはまつた見方にあてはまるものはなかつた。ぐらぐらした、手に負へない、いたづらに父親である彼の胸を暗くし、息をつかせない思ひをさせる、愚かな、口の達者な、だが何となく見捨て切れないもののある、それは彼自身の息子にちがひないが、あれほど入念に手塩にかけたつもりでゐながら、彼の手などは一つと云へども加つてはゐないといふ気のする、得体のしれないものだつた
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