いちふことだが」
「入りましたよ。それがねえ、穴の中は苔が生えたやうな、水たまりもあつてね、やつとこさ奥まで行つてみたんだが、まはりの土はぼろぼろ落ちるし、何のことはない洞穴でさあね、――それでも連中はあつちこつち突ついてみてたがね、含有量はまあもつと試掘してみなけりや判らんさうですよ」
 その「含有量」といふ言葉は富田が昨日聞き覚えたばかりのものだつた。
「や、皆さんどうも遅くなりまして――」
 この時さう云ひながら座に入つて来た者があつた。それは今泉だつた。
 坐りなり、あたりを見まはした。眉の強い、眼の切れ目な、短いつまみ立てたやうな鼻髭を生やした今泉の稍冷い顔つきは、それだけで云ふなら確かに整つた立派な顔だつた。苦味走《にがみばし》つて男らしかつた。たゞ何か大切なものが欠けてゐた。彼は身近かに、皆から稍《やゝ》はなれて手持無沙汰にぽつねんと坐つてゐる房一を見つけた。
「や、これは。高間さんですか。お久しぶりで」――「お忙しいですか」
「いや別に忙しいこともありませんですよ」
 房一はその黒い顔に微笑をうかべながら今泉を見た。
「はあ、はあ」
 急いであたりさはりのない返事をする
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