EENDを騒ぐ。
 土曜の正午から月曜の朝へかけて、誰もかれも田舎へ出かける。倫敦の周囲などには、海岸に、テムズの流域に、この小旅行の土地が無数に散在していて、或いは別荘へ、ホテルへ、またはキャンプに、人は義務のようにして泊りに行く。郊外に近い家の往来に面した部屋なんかにいると、土曜日曜は、ゴルフ道具・小鞄等を満載してしっきり[#「しっきり」に傍点]なしに流れる週末自動車の爆音で夜も眠れないくらいだ。
 この週末旅行《ウィイキ・エンド》のなかで最も上等《クラシイ》なのが、country home へ招いたり招かれたりして、宴会・舞踏・カアド・テニスのパアティを連日連夜ぶっつづける種類である。何しろ爛熟し切った物質文明を無制限に享楽する時代と場処のことだ。しかもそれが大掛りな私遊《プライヴェシイ》なんだから、そのいかにでかだん[#「でかだん」に傍点]なものであるかは、あの有名な petting party なんかという途轍《とてつ》もない性的|乱痴気《ハラバルウ》が公然と行われている事実からでも、容易に想像されよう。そもそも、このペテング遊びなるものは――となると第一、傍道《わきみち》に
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