まごまご》すると sitzplatz だ。山の中腹以下に多い。これを識別するには、雪を手で振るといい。指の間から水が滴《したた》るようでは駄目だし、音を立てて軋《きし》んで、固いボウルになれば占めたものだ。雪融《ゆきど》けは空気のにおいで解る。また、風の方向の通りに小波状に光ってる場所も、避けなければならない――恋愛の悪魔だ。長つづきしないくせに、タアニングも容易でない。そのうちに流行の離婚ということになる。ほんとにあの戦争の苦楚《くそ》を嘗《な》めた中年以上に多い。
FOEHN――瑞西《スイツル》に特有な、俄かの雪解けをもたらす暖かい地方風だ。これが吹き出すと、蝋を引いたばかりのスキイにさえ、雪が球状に附着するから直ぐ予知出来る。そうすると、「毀れる外皮《クラスト》」のあとに、つづいてTHAWが来る惨めな二、三日を覚悟して、人はみんな shank's pony で町と森の逍遥に出かける。おかげで、聖《サン》モリッツや、モントルウや、インタラアケンや、ルツェルンなどの小博物館のような記念品屋《スウベニア》で、水を入れると歌い出す小鳥のコップ・開け方のわからない謎の洋襟《カラア》箱・検
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