やとぼがん[#「とぼがん」に傍点]橇《そり》やカアリング――氷上ボウルスとでも謂《い》うべきウィンタア・スポウツの一種で、三十から四十|封度《ポンド》ある丸い石を氷のうえに転がして、TEEと呼ばれる三つのうち中央の円内へ、出来るだけ早く、そして多く入れようというゲイムだ――は、充分の雪量と適度の寒ささえあれば、雪の質にまであんまり八釜《やかま》しいことを言う必要はない。が、スキイとなると大いに雪を選ぶ。スキイヤアスの一番憎むのは、時ならぬ雨だ。どんなに立派な雪でも、半時間の雨で台なしにされてしまう。単に快走を妨げるばかりでなく、雨を吸った雪が一旦凍ったが最後、そこには、今まで存在しなかった現実の危険が潜み出すからである。
 そこで、ウィンタア・スポウツの眼で見た雪の種類。
 粉雪・柔かい雪・固い雪・毀《こわ》れない外皮《クラスト》・こわれる外皮《クラスト》・それから、これは雪じゃないが、地方的にFOEHNと呼ばれる不時の温風――これらの区別が、ロジェル・エ・ギャレによると、近代恋愛の種々相《フェイゼス》と完全に一致すると言うんだから、確かに一つの「|叫び《スクリイム》」だ。

    
前へ 次へ
全66ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング