は、食堂の真ん中の空地《あき》を埋《うず》めて弾《ば》ね仕掛けのように踊る人々と、紐育《ニューヨーク》渡りのバワリイKIDSのジャズ・バンドとがあった。彼らの三分の二は黒人だった。サクセフォンは呻吟し、酒樽型の太鼓は転がるように轟《とどろ》き、それにフィドルが縋《すが》り、金属性の合の手が絡み――ピアニストは疾《と》うに洋襟《カラア》を外して空《クウ》へ抛《なげう》っていた。
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Was it a dream ?
Say, Was it a dream ?
昨夜《ゆうべ》あなたは僕の腕の中にあった。
僕の腕はまだその感触でしびれてる!
それなのに夢だなんて!
Say, was it a drea−−m !
Was it a drea−−m !?
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 一曲終る。アンコウルの拍手はしつこい。続いてまた、直ぐに始まる。
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Was it a dream ?
Say, was it a−−?!
[#ここで字下げ終わり]
 限《き》りがない。
 ロジェル・エ・ギャレは、ここでいきなり先刻《さっき》言ったように私に話しかけたのだ。しか
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