ばなりません。ベニイの家は、その近くから始まっています。それは、白い、高い石塀の上から、巨大な赤松の林立が、周囲に、森のような影を落していることによって、直ぐに判別されます。正門は、角軒灯と石材との威嚇的効果です。お上品な砂利道と芝生の向うは、神秘そのもののような建物の散在です。そして、勿論、全体の空気には、まるで、王宮のように、そのあちこちに、大きく「禁止」と書かれてあります。邸内には、ヨニック式の礼拝堂があります。円形野外劇場《アンフィセアタア》もあります。埃及角塔《オベリスク》もあります。この邸宅は、トロニア公爵《プリンチペ》の屋敷《パラット》として、羅馬《ローマ》名所の一つなのです。』
『それが、どうして、ベニイ住宅になったのですか。勿論、例の、国際的な猶太《ユダヤ》人の覆面資本団からでも貰った金で、買ったのでしょうね。』
『ところが、そうではないのです。今のトロニア公爵は、この前の駐英大使でしたが、その母親という人が非常なべニイ・ファンで、或る猛烈な感激の瞬間に、このノメンタナ街の家を、土地ぐるみそっくりベニイに贈呈したのでした。で、ベニイは、毎日ここからクイリナアレ庁へ出か
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