ですから。』
ルセアニア人は、彼女が裸体であることを忘れて、肘を突いた。
『あなたは、つい今し方、あんなに自分の不注意を悔いて、密偵を警戒すると誓ったではありませんか。私達は、単純な旅行者なのです。あなたの軽卒によって、馬鹿々々しい悶着への同伴になりたくはないのです。もうすこし、気を付けて戴けないでしょうか。』
『うっかり昂奮していたものですから――。』
この注意に対して、彼女は、意外に簡単に収縮した風だった。国際裸体婦人同盟員が、はじめて自分の裸体を意識したように、緑色の肉体が、眼に見えて、動揺した。それには、汽車の震動ばかりと思えない、何か内容的なものがあった。
が、彼女の精神は、印度護謨《インドごむ》で出来ているに相違なかった。それ程の強靭性を実証する言行に、次ぎの瞬間の彼女は、大飛躍していたのだ。
ルセアニア人に対する彼女の反撥は、もう一度、例の、彼女のお得意の詩句の暗誦によって先駆された。
『Non dir di me, setu di me none sai. Prima pensa perte eppoi drai. 私を知らずに、私のことを言うな。第一にお前自身
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