かったことでしょうから。
長い話を短くするために――それから二、三日経った夜更けでした。
「23」はその晩の二十三に見限《ミキ》りをつけてキャジノを出ようとしていました。あれから「岩のような脚をもった女」が一度も姿を現わさなかったので、彼はそれを内心不満に感じていたところでした。キャジノの正面の階段を下りると、芝生と椰子と月夜の公園《ジャルタン》が一面にゆるい登りになっています。そのオテル・ドュ・パリヘ近いほうの角に、人影が固まっていました。何か罵《ののし》るような声も聞えます。「23」はそばへ駈け寄って、人混みのうしろから首を伸ばしました。
あの女でした。地上に倒れているのです。蒼い顔に歯を食いしばって、半分閉じた眼に月が光っていました。そして、もっと異常なことには、彼女の片手が、同伴者である中老の英吉利《イギリス》紳士の燕尾服の裾をしっかりと押えていることでした。
紳士は、女の手を振り離そうとして威厳のうちに※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]《もが》いていました。見物人は夫婦喧嘩を見るような眼で立っていました。そこを分けて「23」が前へ出ました。
『どうしたのです
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