日であったり、または名前の綴りの字数であったり、その由《よ》って来たるところは千差万別ですが、みな自分の数字を限りなく神聖なものとして、それに絶対の信を置いていることは同じです。で、「23」もそういうわけで、いつも二十三へばかり賭けていたのでした。こうしてキャジノの内部で「23」が彼の代名詞にまで有名化した時です。
その晩かれは例によって「自分のルウレット台」で十|法《フラン》の最小限度を二十三に張り抜いていましたが、ふと気がつくと、何かしら異状に冷たい固いものがかれの大腿《ふともも》を横から押しているのです。何だろう?――「23」は下を覗きました。御存じの通りルウレット台の下には何の仕掛けもありません。が、彼はそこに無意識らしく迫っている隣の女の脚を発見したのです。
その女というのは、高級売春婦以外の何者にも踏めない、三十あまりの、それでも、見たところはたしかにパリジェンヌのようでした。彼女は鋼鉄色の薄い夜会服を着て、廻転盤と「白い丸薬」との機会的な接吻に眼を据えているだけで、たといもう一度あの大戦がぶり返して来ても、自分だけはこのままにしておいてもらいたいと言った様子でした。で
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