チてそんなに売れたか? それほど自力で捌《さば》けて往った手品の種は?――何でもない。
1 マルガリイダに内証でいつ写したものか、リンピイは、品物の一つ一つに、例の白熊テレサの裸体写真や、それから、テレサと黒輝石のような印度《インド》人の火夫との春画しゃしんやなんかを上手にひそめていた。タオルには折ったあいだへ、石鹸や歯みがきは包み紙に、小刀《ナイフ》には柄《え》へ飾り、靴下はなかへ落し、その他の小箱類には蓋の内側へ貼りつけたりして。
2 鶏の交尾してる小さな焼物。一種の護符《タリスマン》的置きもの。これは巴里《パリー》のサクレキュウルのそばでも売ってるが、じつは日本出来である。どうやら、どんどん日本から輸出されてるらしい。
3 用便中の婦人の像。小指のさきほどの大きさ。同じく「|好運呼び《ポルト・ボンヌウル》」のお守り。ブラセルの産。
4 |悪魔の拳《フィガ・ド・デアボ》。これは有名な葡萄牙《ポルトガル》の国産品で、やはり迷信的な厄払いのひとつだ。振りこぶしの人さし指と中指のあいだから拇指《おやゆび》のあたまを覗かせたもので、形は小さい。女中も売春婦《プウタ》も奥様も紳士も、
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