チたはずれだった。白っぽい石壁に赤瓦《あかがわら》を置いた、そこらに多い建物のひとつで、這入ると、正面の廊下を挟んで左右に幾つも小さな部屋が並んでた。それがみんないわゆる歌留多《かるた》場だった。どんなにお客が来ても、夜中の二時まではお酒を売って――これがまたマルガリイダの儲けだったが――釣っておいて、二時かっきり[#「かっきり」に傍点]に、例のテレサのお目見得を挙行する。それが済むと直ぐ、マルガリイダが「|賭け札《テップ》」を売り出す。これは赤・白・黒の三種に塗られた円い木片で、赤のが五十エスクウド――約五円――白は三十エスクウド――ざっと三円――一円どこの十エスクウドのは黒の札《テップ》だった。つまり、どこの博奕場とも同じに直接現金でやり取りするんではなく、一応はじめに金をこの「|賭け札《テップ》」に更《か》えて、これで勝負を争うのだ。そしてあとで清算してそれぞれまた現金に直すわけだが、ここでは、いくら馬鹿勝ちしたって一文にもならない。そのかわりテレサを取る。言わば、金を札《テップ》に換えてやった額だけ、そっくりそのまま家《ハウス》の所得なんだから、誰が勝とうが負けようが、あとは卓
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