フ大音潮に多少 look into する機会を捉えたことがあるから――リスボンでの|びっこ《リンピイ》リンプとの交渉もその一つだが――この歴史的潜在白奴交易路に関する多くのえぴそうど[#「えぴそうど」に傍点]を所有している、が、それらは本篇「しっぷ・あほうい!」とは些少の接続しかないから略すとして――日本でだって君、不良の相場といえば「飲む・打つ・買う」の三拍子とちゃんとちょん[#「ちょん」に傍点]髷《まげ》時代から決定してる。この酒・ばくち・女は、欧羅巴でも同じく社会悪の三頭目だが、この頃ではもう一つDOPEというのが殖《ふ》えて来て、四つの脅威をなして文明と道徳を襲撃している。そこで坊さん・社会教育家・職業的慨世家――これはどこにでもある――がしじゅう何だかんだと喧《やかま》しく言うんだけれど、これらの邪悪《イヴルス》のかげには「史的に約束された一つの大きな手」が動いてるので、目下急にはどうすることも出来ない形だ。事実、すべての社会的破壊作業は国際的に共同戦線を張ってる。近くはこの白奴交易路《ホワイト・スレイヴ・トラフィク》にしても、これは世界的に組織された well known 売春団で、リンピイ・リンプのごとき、彼じしんの自覚と無意識を問わず、その有機網の末梢神経を構成するほん[#「ほん」に傍点]の一細胞に過ぎなかった。
 それにしても、女肉を常食とする点で、リンピイもPIMPはぴんぷ[#「ぴんぷ」に傍点]だった。
 で、彼がどんな猛悪な――あるいは罪のない――「ピンプ」だったかは、その女のしっぷ・ちゃんの手腕を見ただけでもおよそ判断のつくことだが、そのうえ彼は、妻のマルガリイダ婆さんから振り当てられてる手引人としての仕事も、決して忘れてるわけではなかった。
 が、どうしてリンピイが「客を引」いたのか、僕は知らない。とにかく、僕と彼のあいだに支那公《チンキイ》ロン・ウウのしっぷ[#「しっぷ」に傍点]・ちゃん[#「ちゃん」に傍点]契約が目出度《めでた》く成立して、二人が酒場《タベルナ》を出たとき、おどろいたのは、六、七人の船員たちが自進的に燃焼水《アグワルデンテ》に別れを告げて僕らといっしょに歩き出したことだ。
 だから、リンピイを先に妙に黙りこくった一行がどんどん[#「どんどん」に傍点]|山の手《バイロ・アルト》――高い区域――の坂を登って行った。マルガリイ
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