_]を着て、草と好天気と羊を追ってぶらぶら[#「ぶらぶら」に傍点]してるうちにやっぱり誰かに殺され、こんどの第三人目は、やっと三角帽を戴き毛皮つきいんばねす[#「いんばねす」に傍点]に手を通そうとしているところで、第四人目に楽しく殺害されて往き、この第四人目は――どうも限《き》りがないが、つまり、その度に飼主が変るんだけれど、羊のむれは羊の群らしくそんなことに関係なく、しじゅう汽車に驚いて集《かた》まってみたり、池に直面して凝議《ぎょうぎ》したりなんかばっかりしてる。
SAY! 古く粗雑に幸福な影絵の国ほるつがる。
お前は「欧羅巴《ヨーロッパ》のKOREA」だ。絢爛の色褪《いろあ》せた絵画織物《テベストリー》だ。Poogh !
[#ここから2字下げ]
|大地のおわるところ《オンデ・テルミナ・ア・テアラ》
|大海の始まるところ《オンデ・ア・コミエンサ・ウ・マアル》
[#ここで字下げ終わり]
――若いころ香水の朝風呂へ這入って金の櫛《くし》で奴隷に髪を梳《す》かせた史上の美女が、いま皺《しわ》くちゃの渋紙に白髪《しらが》を突っかぶって僕のまえによろめいてる。Why should I not take my hat off to thee?
そうしたら「|大地の終るところ《オンデ・テルミナ・ア・テアラ》|大海の始まるところ《オンデ・ア・コミエンサ・ウ・マアル》」にこの海港リスボンだった。
[#ここから2字下げ]
|今日は《ボタアル》!
[#ここで字下げ終わり]
その古趣と不潔と野蛮と俗臭の小首府、神様と文明に忘れられたLISBOAが、こうおりぶ[#「おりぶ」に傍点]油くさい嗄《か》れ声を発して僕の入市に挨拶した。
[#ここから2字下げ]
|こんちは《ボタアル》!
|こんちは《ボタアル》!
[#ここで字下げ終わり]
何と感謝すべきこの放浪性! その瞬間から僕はりすぼんとリスボンの古趣・不潔・無智・野蛮・神秘・俗悪のすべてを呼吸して、雑音と狭い|曲りくねった街路《ワインディング・ストリイツ》の迷宮へ深くふかく分け入った。そして当分出て来なかった。だから君、さっきから何度も保証したとおり、これはみんな、そのあいだにおける僕――ジョウジ・タニイ――のまんだりん[#「まんだりん」に傍点]仮装舞踏曲であることが一層うなずけよう。BAH!
年老いた両棲動物がリスボンだ。か
前へ
次へ
全40ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング