ダ》なのである。
槍馬士《ピカドウル》が出て来た。
日光と槍先と金モウルだ。
悍馬《かんば》を御して牛の周囲を駈けめぐってる。
牛は馬を狙って角を下げている。
ピカドウルの槍が走った――うわあっ! 血だ血だ! ぶくぶく[#「ぶくぶく」に傍点]と血が噴き出したよ牛の血が! 黒い血だ。血はみるみる牛の足を伝わって流れて、砂に吸われて、点々と凝って、虎視眈々と一時静止した牛が、悲鳴し、怒号し、哀泣し――が、どうせ殺すための牛だ。そら! また槍《ガロチヤ》が流れたぞ! もう一つ、紅い傷口がひらくだろう――ひっそりと落ちる闘牛場の寂寞――。
やあっ! 何だいあれあ?
棒立ちになった馬、ピカドウルの乗馬が急に紅い紐《ひも》を引きずり出したぞ。ぬらぬらと日光を反射してる。
EH! 何だって? 馬が腹をやられた? 牛の角に触れて?――あ! そうだ、数本の馬の臓物がぶら[#「ぶら」に傍点]下って、地に垂れて、砂にまみれて、馬脚に絡んで、馬は、邪魔になるもんだから蹴散らかそうとして懸命に舞踏している!
それを牛が、すこし離れてじいっ[#「じいっ」に傍点]と白眼《にら》んでる――何だ、同じ
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