bゥんだり消えたり、名だけ壮麗なHOTELルイ十四世――お泊り一人一晩。七|法《フラン》・種々近代的御便宜あり――の狭い入口に、毛布をかぶった老婆が占いの夜店を出していたり、それへ子供を伴《つ》れたお神《かみ》さんが何やら煩悶を打ちあけていたり、一つの窓から、
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Il est cocu, le chef de gare !
Il est cocu, cocu, COCU !
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なんかとどら[#「どら」に傍点]声の唄と一しょに笑いと葡萄酒《ヴァン》――ボルドオ赤《ルウジ》・一九二八年醸製――の香《かおり》が流れてきたり、街角の巡査がその唄に合わして首を振ったり、その巡査に売春婦が「今晩は」して通ったり、灯の河の大街《アヴェニウ》を横断したり眠ってる往来《リュウ》を過ぎたり、エッフェルが見えたり見えなくなったり、遠くの町を明るい電車が走っていたり停《とど》まっていたり――とにかくぶう[#「ぶう」に傍点]とセエヌを渡って、昼ならば、古本・古物の市の立つ川端《ケエ》から、また暫らく走りに走り、廻りに廻ったわが探検自動車が、やがてぶう[#「ぶう」に
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