ネ時代めいた固っ苦しいんじゃない。その中のひとりが、今日私によって九月四日通りで捕獲された若い英吉利《イギリス》紳士である一事に徴しても判るとおりに、この群集こそは、これから一晩がかりで「夜の巴里《パリー》の甘い罪悪」を探り歩こうという、世にも熱烈な猟奇宗徒の一団であった。群集といったところで全十四人である。一たい巴里というところは、いつだってこの種の、アンリ親分に従えば「物欲しそうな面《つら》の金持ち」で、こんなことのためには即座に幾らでも投げ出そうという意気込みでふわふわ[#「ふわふわ」に傍点]となっている連中――多くは中年過ぎた外国人――をもって充満しているんだが、こういう「生きている幽霊」には、本国で紳士ぶっていなければならないせいか、妙にいぎりす人が多い。つぎは亜米利加《アメリカ》人だが、これあまあ大概の事物には興味を持つんだし、ことに金を出すことにかけちゃあ何にだって人後に落ちない気でいるんだから、この今夜の一隊《パアティ》も、例によってほとんど、英米両国の旅行者だけだったと言っていい。もちろん男ばかりである。
アンリ親分はまだ来ていない。
ところで、私が捕まえたのは若
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