蜃気楼。
曰く。すでに天へ届いている現代バベルの架空塔。
また曰く。世紀長夜の宴を一手に引き受けて疲れない公休市《ハリデイ・タウン》。
詩情と俗曲と秋波と踊りと酒と並木と女の足との統一ある大急湍《だいきゅうたん》――OH! PARIS!
土耳古《トルコ》人にもせるびや[#「せるびや」に傍点]人にも諾威《ノウルエー》人にも波蘭《ポーランド》人にも、ぶらじりあんにもタヒチ人にも、そして日本人にも第二の故郷である異国者の自由港。
誰でもの巴里《パリー》。
だから「私の巴里」――もん・ぱり!
みんなが自分の有《もの》として独占し、したがって何人《なんぴと》にも属していない地球人《コスモポリタン》の交易場。
やっぱり「私の巴里」――もん・ぱり!
英吉利《イギリス》人には Paris, England であり、あめりか人にとっては、Paris, U.S.A. であり、ふらんす人は未だに Paris, France の気でいるが、ほんとは疾《と》うの昔に Paris, Bohemia になってる「私の巴里」――もん・ぱり!
何という悪戯的な蟲惑《こわく》と手練手管の小妖婦が、この
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