夜行。奥地の湖水地方へ――イマトラ――サヴォリナ――プンカハリュウ――ヴィプリ―― And God knows where !
奥の細道
イマトラの滝。
ヴァリンコスキの急流。
イマトラでは早取《はやとり》写真のお婆さんに一枚うつしてもらう。待ってるうちに濡れたままの写真を濡れたままの手で突き出す。どうやら見ようによっては人らしくも見えるものがふたつ浮かび出ていて、あたい金五マルカ、邦貨約二十五銭也。
ヴォクセニスカという村へ辿りつくと、この機を逃さず珍種日本人を見学せばやとあって、黒土《くろつち》道の両側に土着の人民が堵列《とれつ》している。逸早く私たちの来ることを知って、小学校の先生が学問の一部として生徒を引率して見せにきたに相違ない。いやに子供が多い。子供というより「餓鬼」といったほうがぴったり[#「ぴったり」に傍点]する。その餓鬼の大群集がぽかんと口をあけて、探険家然と赤革の外套なんかを着用している、二人とふたりの持物に飽かず見入っている。日本でも、よほどの田舎へ異人さんが行くと今でもこうだろうが、こうして自ら異人さんの立場に身を置いてみると、これはなかなか愉
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