と思われるほど、クエイントな商店街の形式をそなえているんだから、十五世紀のメトロポリス! what a find ! というんで、大いに勇んだ私たちがどんどん這入りこんで行こうとすると、そばの家の軒をくぐってばかにせいの高い若者があらわれて出た。これも確かに十五世紀の人物とみえて、びっくりするような大男で、何かしきりに話しかけるんだが、十五世紀にしろ現代にしろ、諾威《ノウルエー》語は私には少しも通じない。で、ことばの判らない時の用意にもと絶えず貯蔵してある奥の手を出して、例のにやにや[#「にやにや」に傍点]をやってみたが、先方には一から反響しないどころか、しまいには自分でいらいらして来て何やら耳のそばで我鳴り立てる始末。巨人だから声も大きい。しかも、ゆっくり言えばわからないはずはないとでも思ってるらしく、一語々々はっきり句切って噛んで含めるように言うんだが、早く言ったって遅くいったって、知らない言葉は解りっこない。どうも馬鹿なやつで、世界じゅう諾威《ノウルエー》語をしゃべってると信じてるらしい。いつまで経ってもこっちがへらへら[#「へらへら」に傍点]笑ってるもんだから、十五世紀の住人は
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