tをかしこんで「YA・YA!」と口ぐちに答えている。私も知らん顔もしていられないから、老人へは葉巻を二本、他の連中へもそこばくの黄白《こうはく》を撒いて「どうぞ宜《よろ》しく」とやった。
が、いつとも知れないその報告を当てに、ホテルの二階にのんべんだらり[#「のんべんだらり」に傍点]としているわけにも往かないから、またパブスト氏をつかまえてカイゼルの現在の人相をくわしく訊き質《ただ》すと、彼――というのは老人のいわゆるオウルド・ビリイ――は、この頃好んで、昔よく流行《はや》った灰色の両前の服を着て、からだは瘠《や》せて高く、ふるい麦藁帽子の下から白髪を覗かせ、それに赤黒い顔と白い顎ひげ、すこし左の肩を上げ気味に、ステッキでそこらの草や石をやたらに叩きながら、忙がしくて耐《たま》らないといったようにせっかち[#「せっかち」に傍点]に歩く――という。これもどうも平凡で、こんなお爺《じい》さんはざら[#「ざら」に傍点]にいそうだが、カイゼルなら村の人がみんな挨拶するからすぐ判るというので、そこでドン・キホウテとサンチオ・ハンザのように、ふたりはいよいよこっちからカイゼルをさがして、午後のド
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