オて、和蘭《オランダ》に関する必要な知識を、まず二、三左に列挙しよう。
ハランド――どうも独立国らしく思われる。地理については、地理の本の和蘭《オランダ》の条参照のこと。ここではただその地形を略説せんに、概して土地、海面より低く――他の多くの国は幾らか海よりも高きを原則とす――一望さえぎるものなき平原にして、たまたま丘、もしくは山と見ゆるものあるは、怠惰なる牛の座して動かざるなり。また時に遥かに連山の巍峨《ぎが》たるに接することあれど、すべて雲の峰なれば須臾《しゅゆ》にして散逸するをつねとす。
気候。驟雨《しゅうう》多し。青天に葉書を出しに行くにも洋傘《コウモリ》を忘るべからず。
歴史。歴史の本に詳し。
名所。国をあげて遊覧客のためにのみ存在す。
国民性。偉大なる饒舌家。老若男女を問わずよく外国語――日本語以外――をあやつり、即時職業的ガイドに変ず。自己ならびに過去を語るを好み、向上心に乏しく、安逸と独逸《ドイツ》風のビールと乾酪《チーズ》をむさぼる。人を見ると名刺をつき出し、署名を求める癖あり。皮膚赤く、髪白く――小児も――顔飽くまでふくれ、温順なる家畜の相を呈し、世辞に長
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