O人でレモナアドの大杯を傾ける。今こいつに酒精《アルコール》分を許しては大へんだからだ。
それからまた田舎みち。モン聖《サント》ジャンの野原。ここがほんとの戦場だ。陽がかんかん[#「かんかん」に傍点]照って「土のピラミッド」が立ってる。下に「当時のパノラマ」の見世物がある。這入ってうっかりしてるとのこのこ[#「のこのこ」に傍点]案内者がついてきて勝手にまくし立てる。
『この時ナポレオンは兵七万一千九百四十七を擁し、あれなる白い百姓家プランシノアに陣取りまして午前九時、あい変らずこう左手をうしろに廻して白馬に跨《また》がり――それに対し聯合軍は、こちらのブラン・ラルウの街道を押さえ――。』
見たようなことを言ってる。
『ははあ、どうも大したもんだな。』
『大変でしたろうねえ、ほんとに。』
ほどよく感心してビラミッドへ登ると、頂上に獅子像が頑張っていて、いま見たパノラマの現場は指呼《しこ》のうちだ。
天地悠久と雲が流れて、白耳義《ベルギー》の野づらはうらうら[#「うらうら」に傍点]と燃えている。ここにも「すっかり当時を心得」たのが網を張っていて、
『あれ! あすこに見えまする一本の
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