《あいかな》い候御料理色々御紹介|可申上《もうしあぐべく》候
一、すき[#「すき」に傍点]焼開始
 牛鍋 弐|志《シリング》六|片《ペンス》
 鳥鍋|及《および》豚鍋各参志及参志六片
 鴨鍋及鯛ちり各参志
  プライベイト大宴会室の設備も有之《これあり》候
[#ここで字下げ終わり]
 これこそストランド「中国|飯店《めしや》」藤井《ふじい》米治《よねじ》氏大奮闘――の紙上披露である。すき[#「すき」に傍点]焼開始並びに神秘的な豚鍋よ、永久にBANZAI!
 さて、新聞のことはこれでいいとして羽左衛門だが――。
 こういういきさつ[#「いきさつ」に傍点]を経たのち、こつぜんとしてパアク・レイン・ホテルの帳場に出現した私たちである。市俄古《シカゴ》トリビュウンの写真班が亜米利加《アメリカ》漫遊中のニウジイランド鉱泉王を襲撃に来たように、うっかりしている番頭の顔へ、私は出来るだけ気取った発音を吹っかけてやる。
『ミスタ・ウザエモン・イチムラという日本の俳優の方が――。』
 と言いかけた私は、じつはここらで、その赤毛の番頭が大いに感激の色を呈し、思わず、AH! とか、OH! とか多分の肯定と「
前へ 次へ
全63ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング