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 ルウブリヤア・カペイカ!
 いろいろに聞える声が雨のように降る。ほんとに赤くなってそのすべてを辞退した私達は、「役人」の赤帽に「役人」の運転手を呼んでもらって政府直営の自動車《プロカアト》に避難し、政府直営の商店が並んでいるあいだを政府直営の――まあ、とにかく市中へ出た。自動車《プロカアト》がうごき出しても馬車屋が馬車を下りて追跡してくる。まけるから乗れというのだ。にちぇうぉ!
 何という高い空、なんという中世紀じみた市街、なんという緩慢な雑沓、そしてすべてが何という「無産さ」であろう! 多くの外国人を知らない住民たちが、どこへ行っても私達を見てささやきあっている。ことによるとアフガニスタンの王様がまた来たのかと思ったのかも知れない。移転した旅行局《デルウトラ》のあとをあちこち捜し歩いて、とうとうバルシャヤ・モスコウフスカヤ旅館の隣りに発見する。寝台券の取消しだ。両替は国定相場で一円が九十三|哥《カペイカ》。ずいぶん虫のいい率である。が、これもにちぇうぉ[#「にちぇうぉ」に傍点]!
 ホテルはバルシャヤ・リュビヤンカ街のセレクト。労農政府の法律に準拠して戸を排すると、労農政府
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