てもいいんでしょうと思いましたけれど、これを持って来ましたの。
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手に持っている鏡を差し出す。
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安重根 あ、鏡ですね。
ニイナ 鏡ですねは心細いわ。さっきあなたが鏡がほしいようなことを言ってらしったから、これでも、家じゅう探して見つけて来たんですの。でも、こんな暗いところへ鏡を持って来てもしようがありませんわね。
安重根 いいんです。ここでいいんです。
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と鏡を受け取ろうとする。
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ニイナ (驚いて)まあ、安さん、その手はどうしたんですの。
安重根 手? 僕の手がどうかしていますか。
ニイナ どうかしていますかって、顫えてるじゃないの、そんなに。
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安重根はニイナへ背中を向けて、自分の手を凝視める。自嘲的に爆笑する。
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安重根 (手を見ながら)そうですかねえ。そんなに、そんなに顫えていますかねえ。はっはっは、こいつあお笑い草だ。
ニイナ
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