突然立ち停まって安重根の腕を握り、下手を覗く)君! 柳さんじゃないか。そうだ。柳麗玉さんだ。
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二人が下手に眼を凝らしつつ古着屋の前の電柱の陰へ隠れる時、柳麗玉が現れる。ウラジオから今着いたところで旅に疲れた様子。一尺四方程の箱包を糸で縛って抱えて、家を探す態で軒並みに見上げながら、不安げに歩いて来る。
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安重根 (やり過しておいて)柳さん!―― やっぱり君だったか。
柳麗玉 あら! 安さん。よかったわ。まあ、徳淳さんも――。
安重根 (嬉しそうに柳麗玉の肩へ手を置こうとし、自制して後退りする)何しに来たんだ。何しに君はこんなところへ来たんです。(不機嫌に)僕らの今度の目的は、君も知っているはずだ。
柳麗玉 (いそいそと)ああよかった。後を追っかけて来たんですわ。夢中でしたわ。でも、ここでお眼にかかれて、ほんとに――。
禹徳淳 (苦々し気に)とうしたんです。柳さんはよく理解して、あの朝、ウラジオの停車場で気持ちよく見送ってくれたじゃないですか。
柳麗玉 (安重根へ)すぐつぎの汽車でウラジオを発って、今着
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