けこっそり耳打ちしておきましたからね。大丈夫心得ていますよ。知らん顔して、追っつけみんなを帰すでしょうから、安心してゆっくりおやすみなさいよ。
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黄瑞露去る。長い間。
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安重根 (苦笑)そいつあありがたい。そんなに人相が変ったんなら、誰に会ってもわかるまい。
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隣室では禹徳淳の歌の音読がはじまっている。柳麗玉は忍び笑いする。
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安重根 (歌声に聞き入って微笑)元気にやってるなあ。(柳麗玉の様子に気づいて)莫迦によろこんでいるねえ。君もおれにあいつを殺させたい一人なんだろう。みんなのように、ああしておれの志を壮として、行をさかんにしてくれるというわけか。
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柳麗玉の笑いは涕泣《すすりな》きに変っている。
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安重根 (憮然と)何だ、泣いているのか。
柳麗玉 (眼を拭いて)もうじき世界中に有名になる安さんと、こうしているなんて、あんまり嬉しいん
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