ました。
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駅長去る。支那人ボウイは顔をしかめて随《つ》いて行く。駅長はただちにドアの真向うの部屋へはいって、同じことを言っているのが聞こえて来る。間。
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禹徳淳 (安重根を凝視した後)君はどう考えているか知らんが、僕らは決して個人の挌で(低声に)伊藤を殺《や》っつけるんじゃあないんだ。人数こそ尠いが、この行為は戦争だよ。立派な××戦争だよ。君は義兵の参謀中将として指揮をし、僕はその義軍に参加しているのだ。事成れば、戦時の捕虜として潔く縛《ばく》に就く覚悟でいる。
安重根 (続けさまに巻煙草を吹かして歩き廻りながら、苦笑)解った、わかった! 僕も今さらこんなことを言いたくはないが、本国では、外部も工部も法部も、いや、通信機関まですべて日本の経営なんだぜ。いまわかったことじゃないが、考えてみると、これじゃとても大仕掛けに事を挙げるなんて思いも寄らない。例えば、ここで僕らが何かやったって、果して僕らの目的、僕らの意思が、大衆に徹底するかどうか――。
禹徳淳 (顔色を変える)おいおい、今になって君は何を言い出
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