》の燭《ともしび》、晝は御室《おむろ》、太秦《うづまさ》、梅津の邊を巡錫《じゆんしやく》して、夜に入れば、十字の繩床《じようしやう》に結跏趺坐《けつかふざ》して※[#「※」は「俺」の「にんべん」に代えて「くちへん」、読みは「うん」、第3水準1−15−6、66−4]阿《うんあ》の行業《かうごふ》に夜の白むを知らず。されば僧坊に入りてより未だ幾日も過ぎざるに、苦行難業に色黒み、骨立ち、一目《ひとめ》にては十題判斷の老登科《らうとくわ》とも見えつべし。あはれ、厚塗《あつぬり》の立烏帽子に鬢を撫上《なであ》げし昔の姿、今安《いづ》くにある。今年二十三の壯年《わかもの》とは、如何にしても見えざりけり。
顧みれば瀧口、性質《こゝろ》にもあらで形容邊幅《けいようへんぷく》に心を惱《なや》めたりしも戀の爲なりき。仁王《にわう》とも組《くま》んず六尺の丈夫《ますらを》、體《からだ》のみか心さへ衰へて、めゝしき哀れに弓矢の恥を忘れしも戀の爲なりき。思ヘば戀てふ惡魔に骨髓深く魅入《みい》られし身は、戀と共に浮世に斃れんか、將《は》た戀と共に世を捨てんか、擇《えら》ぶベき途《みち》只々此の二つありしのみ。時
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