ぬ。盛衰興亡はのがれぬ世の習なれば、平家に於て獨り歎くべきに非ず。只々まだ見ぬ敵に怯《おそれ》をなして、輕々《かろ/″\》しく帝都を離れ給へる大臣殿《おとゞどの》の思召こそ心得ね。兎《と》ても角ても叶はぬ命ならば、御所の礎《いしずゑ》枕《まくら》にして、魚山《ぎよさん》の夜嵐《よあらし》に屍《かばね》を吹かせてこそ、散《ち》りても芳《かんば》しき天晴《あつぱれ》名門《めいもん》の末路《まつろ》なれ。三代の仇《あだ》を重ねたる關東武士《くわんとうぶし》が野馬の蹄《ひづめ》に祖先《そせん》の墳墓《ふんぼ》を蹴散《けちら》させて、一門おめ/\西海《さいかい》の陲《はて》に迷ひ行く。とても流さん末の慫名《うきな》はいざ知らず、まのあたり百代までの恥辱なりと思はぬこそ是非なけれ。
瀧口はしばし無念の涙を絞りしが、せめて燒跡《やけあと》なりとも弔はんと、西八條の方に辿り行けば、夜半《よは》にや立ちし、早や落人《おちうど》の影だに見えず、昨日《きのふ》までも美麗に建て連《つら》ねし大門《だいもん》高臺《かうだい》、一夜の煙と立ち昇《のぼ》りて、燒野原《やけのはら》、茫々として立木《たちき》に迷ふ鳥
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