幕末維新懐古談
門人を置いたことについて
高村光雲
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)今日《こんにち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)終日|孜々汲々《ししきゅうきゅう》と
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今日《こんにち》までの話にはまだ門人の事について話が及んでおりませんから、今日はそれを話しましょう。実は、私が弟子を置いたということは偶然のことではないのです。これには少し理由のあることで……といって何もむずかしいことでも何んでもありませんが、……前にも度々話した通り、私が弟子を置き初めた時分……ちょうど西町時代の初期頃は木彫りが非常に頽《すた》れ、ひとえに象牙ばかりが流行《はや》った時代。木彫りといってはほとんど全く顧みる人もなかったのであります。しかし木彫りをする人は多少はありました。多少はあるにはあっても、その中に腕のすぐれた人はなおさら牙彫りの方へ職を変えてしまいましたから、一層木彫りの方は頽れて行ったような次第であって、わずかに自分ら一、二のものが取り残されたようなわけで木彫りの振《ふる》わないことは夥多《おびただ》しいのでありました。したがって
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