幕末維新懐古談
総領の娘を亡くした頃のはなし
高村光雲
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)遡《さかのぼ》り
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)学校|最寄《もよ》り
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学校奉職時代の前に少し遡《さかのぼ》り、話し残したことを補充して置きたいと思います。
学校へ入りましたのは仲御徒町《なかおかちまち》一丁目に住まっていた時のことで、毎日通勤するようになってから、住居《すまい》はなるべく学校へ近い方が便利だと思いました。それにこの御徒町附近一帯は軒並み続きで、雑沓《ざっとう》するので、年寄りや子供には適した処でない。衛生の方からいっても低地で湿気が多く水が非常に悪いので、とうから引っ越したいと思ってはいましたが、そういう訳になかなか参りませんので、よんどころなくそのままになっておりました。しかるに今度学校へ出るようになって、学校へ近い方が便利という必要から、何処か格好な家がないかと気を附けるようになりました。
こういう時には私の父は、前にも申した通り、至って忠実な人であるから、隠居仕事に学校|最寄《もよ》りの方面を方々と探して歩
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