た。御玄関に向った正面へ飾り附け、足場を払って綺麗《きれい》に掃除《そうじ》を致し、幔幕《まんまく》を張って背景《はいけい》を作ると、御玄関先は西から南を向いて石垣になっていて余り広くはありませんから、其所《そこ》へ楠公馬上の像が立つとなかなか大きなものでありました。
それに材は檜で、只今、出来たばかりのことで、木地《きじ》が白く旭日《あさひ》に輝き、美事でありました。
これで好いとなりましたのが午前十一時。
聖上には正十二時御出御という触れ。一同謹んで整列をして差し控えておりますと、やがて、フロックコオトの御姿で侍従長|徳大寺《とくだいじ》公をお伴《つ》れになってお出ましで御座いました。
陛下には靴《くつ》をお召しで、階段の上にお立ちになってお出でで御座いましたが、やがて階段をば一段二段とお下りになって玄関先に御歩を止め御覧になってお出でで御座いました。岡倉美術学校校長は徳大寺侍従長のお取り次ぎで御説明を申し上げておりました。すると、聖上には、何時《いつ》か、御玄関先から地上へお降り遊ばされ、楠公像の正面にお立ちであったが、また、馬の周囲を御廻りになって、仔細《しさい》に御覧
前へ
次へ
全7ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング