幕末維新懐古談
奈良見物に行ったことのはなし
高村光雲
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)船問屋《ふなどいや》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|初手《しょて》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)くさ[#「くさ」に傍点]した
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三月十二日にお雇いを拝命すると、間もなく、岡倉幹事は私に奈良見物をして来てくれということでした。岡倉氏という人はいろいろ深く考えていた人であって、私がまだ今日まで奈良を見たことがないということを知っていたので、私にその方の見学をさせるためであったことと思われます。これは氏の行き届いた所であります。
私と、結城正明氏とが一緒に行くことになりました(結城氏という人は狩野派の画家でありました)。両人ともに往復十日間の暇を貰いまして、旅費百六十幾円かを給されました。まだ東海道の汽車が全通しない頃でありましたから、私たちは横浜へ出て、船問屋《ふなどいや》の西村から汽船で神戸へ着き、後戻《あともど》りをして奈良へ参り、奈良と京都の二ヶ所について古美術を視察見学したのでありました。私は
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