幕末維新懐古談
大仏の末路のあわれなはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)切舞台《きりぶたい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)神田|明神《みょうじん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)もぎり[#「もぎり」に傍点]
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 佐竹の原に途方もない大きな大仏が出来て、切舞台《きりぶたい》で閻魔の踊りがあるという評判で、見物人が来て見ると、果して雲を突くような大仏が立っている。客はまず好奇心を唆《そそ》られてぞろぞろ這入る。――興業主は思う壺という所です。
 大入りの笊の中には一杯で五十人の札《ふだ》が這入っております。十杯で五百人になる。それがとんとんと明いて行くのです。木戸口で木戸番が札を客に渡すと、内裏《うちうら》にもぎり[#「もぎり」に傍点]といって札を取る人がおります。これは興業主で、その札によって正確な入場者の数が分るのであります。初日は何んでも二十杯足らずも笊が明いて、かれこれ千人の入場者がありまして、まず大成功でした。

 ところで、物事はそう旨く行きません。――
 初日の景気が少
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