やっておられたのですか。君が矮鶏を拵えたと聞くと、これはどうも拝見しないわけには行かん。一つその新作を見せて頂こう」
ということになりました。
 私の、証拠を挙げて申し開いた以上、証拠物件を望まれて見せないわけに行きませんから……また私としてもこれらの幹部の識者の批判を受けることは望ましくないことでありませんから、まだ脚の方のつなぎを切ったりしない九分通り出来ている矮鶏の作を次の日の集まりの席へ持って行きました。

 私が人々の前で、風呂敷の中から矮鶏を出して、机の上へ飾って見せました。
「これは面白い」
「こいつは素晴らしい」
などいう声が人々の口から起りました。
 この席上には会頭もおられましたが、
「これはどうも傑作だ」
といって乗り出して見ておられました。
「なるほど、こんな大仕事を君は黙ってやっていたのですか。それを怠けていたなどと仮りにもいった人は失言だね」
など笑っていっていた人もあった。
 とにかく、私の製作はこの席上の人すべてが賞讃しているように私には見えました。
 私は、作の上についての非点を聞きたいつもりであったのに、皆からただほめられて少し気抜けがしたような形で
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