幕末維新懐古談
葉茶屋の狆のはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)昇《のぼ》り切った

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二度|吃驚《びっくり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)犬ころ[#「ころ」に傍点]
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 さて、鏡縁御欄間の仕事が終りますと、今度は以前より、もっと大役を仰せ附かりました。
 これは貴婦人の間の装飾となるのだそうで御座いますが、貴婦人の間のどういう所へ附いたものかその御場所は存じません。何んでも御階段を昇《のぼ》り切ったところに柱があってその装飾として四頭の狆《ちん》を彫れという御命令であった。
 これは東京彫工会へ御命令になったので、木彫りで出来るのではなく、鋳金《いもの》となって据えられるので鋳金の方は大島如雲《おおしまじょうん》氏が致すことになったが、原型の彫刻は高村にさせろという御指命で彫工会がお受けをしたのでありました。
 そこで、私は原型を木で彫ることになりました。およその下図は廻って来ましたが、今度は鏡縁欄間のような平彫りとは違って狆の丸彫りというのですから、
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