とうつう》を感じて、いても起《た》ってもいられない位……僂麻質斯《リューマチス》とか、神経痛とかいうのでもなく何んでも啖《たん》が内訌《ないこう》してかく全身が痛むのであるとかで、強《し》いて名を附ければ啖陰性《たんいんせい》という余り多くない病気だと合田氏は診断している。一時は腰が抜けて起つことも出来ない。寝ていても時を頻《しき》って咳《せ》き上げて来て気息《いき》を吐《つ》くことも出来ない。実に恐ろしく苦しみました。
それで、医師の合田氏は、これはいけないと非常な丹精をしてくれまして、夜も帰宅《かえ》らず、徹宵《てっしょう》附き添い、薬も自身|煎《せん》じて看護してくれられました。その丹精がなかったら恐らく私は生命を取られたことと思いますが、三ヶ月ほどしてようやく快方に趣いたのであった。
この合田氏という医師は、これまた一種の変人であって、金持ちを嫌《きら》いという人、貧乏人のためには薬代も取らぬというほどに貧窮者に対して同情のあった人で、医は仁術なりという言葉をそのまま実行されたような珍しい人でありました。気性が高潔である如く、医術も非常に上手でありました。私がこういう名医
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